各 科 の ご 案 内
department
教育体制の充実と
ライフスタイルにあった
勤務体制の確立
呼吸器外科 教授
光岡 正浩
当科で扱う疾患は肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔疾患、気胸、膿胸、中枢気道狭窄などです。年間約230例の手術を行い、そのうち半数超は原発性肺癌です。肺癌治療は新薬の登場、画像診断技術の進歩、手術方法の変化によってものすごいスピードで進化しています。その流れを牽引してゆくことも大学病院の役割のひとつです。
手術方法では、10年前は開胸手術が主でしたが、現在は胸腔鏡下手術が肺癌手術の8~9割を占めるようになりました。DaVinciという手術用ロボットを使用した肺癌手術が2019年から保険収載になり、当科では同年12月に導入しました。通常の胸腔鏡下手術、ロボット支援手術、開胸手術のいずれを選択するかは個々の症例で検討し、患者さんのご希望も加味して最も適しているものを選択します。
研究では肺癌および縦隔腫瘍の基礎的研究、小型肺結節病変の術中同定方法、肺切除術後合併症の病態生理(血栓症、脳梗塞、肺漏など)、呼吸器インターベンション治療の臨床評価などを現在行っています。国際学会にも積極的に演題を出しています。海外への渡航や留学が一時的に難しくなりましたが、いつでも対応できるように研究材料・留学先を考えています。
優秀な若手医師を世に送り出すことも大学病院の使命であり、オリジナルの「呼吸器外科手術トレーニングカリキュラム」を2015年から導入して安全かつ正確な手術スキルを教育しています。このカリキュラムは関連医療施設である公立八女総合病院、済生会日田病院などと共有し、福岡県南部の住民が安心して近くの病院で標準的な呼吸器外科治療を受けることができる体制を確保した状態で外科医教育を行うように努めています。当科ではこのような教育体制の充実と並行してスタッフの働き方にも注目しています。2021年1月からテスト的に勤務開始時間・終了時間を個々でシフトさせています。今後はまだいくつかのハードルがあると予測しますが、女性医師と男性医師が互いに過度なストレスを与えず自然に協力しあい、マンパワーと医師サポート力を拡充し、各々のライフスタイルにあった勤務体制の確立をめざしています。
我々は「標準治療を安全に提供すること」が最も重要だと考えています。新しい医療技術の導入にも積極的に取り組んでいますが、新技術であるからこそ安全面には十分な配慮が必要です。そのために当科では術者の技術トレーニング、基礎実験、臨床研究に力を入れています。そして実臨床では最新医療が必ずしも最良医療とは限らないことまで考慮した上で、個々の患者に対して最も推奨できる治療を安全に遂行できるように考えています。
また当科では医療連携センターと連携しながらDX化を推進し、病病連携・病診連携を円滑に行い、地域住民に質の高い医療を提供できるように努力しています。
当院で肺葉切除を行った肺癌症例の再発に関する後ろ向き研究を行っています。膜貫通たんぱく質や制御性T細胞などに注目し、再発との関わりや薬物治療へ応用できるよう解析しています。
胸腺腫・胸腺癌という稀な疾患に関しても研究を行っています。患者数が少ないため治療法が確立されていない疾患ですが、過去から現在に至るまでに当院にて集積された豊富な標本を用いて、多角的な視点で解析を行っています。
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