各 科 の ご 案 内
department
下部消化管グループでは、小腸・大腸・腸間膜の外科領域のすべての疾患を担当しております。 特に大腸癌(結腸癌、直腸癌、肛門癌)、小腸癌、消化管悪性リンパ腫、消化管間葉系腫瘍などの悪性腫瘍が主な対象疾患です。また、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)や機能的な消化器疾患の治療にも積極的に取り組んでおります。
基本方針は、根治性と機能温存の両立をめざした質の高い手術を提供することです。早期大腸癌は内科のグループが高度な技術で内視鏡的治療を行っていますが、内視鏡治療のできない早期癌や、進行癌がわれわれ外科のスタッフが手術(開腹、腹腔鏡)を施行します。直近の実績は図表に示します。 私たちの教室の手術症例の特徴は直腸癌の割合が他施設よりも高いことです。直腸は骨盤内という狭い空間に膀胱、子宮、卵巣、前立腺、様々な神経などが近接しているため、結腸の手術と比べて困難なことがあります。特に肛門に近い直腸癌では、排便機能に重要な肛門括約筋を温存できず永久人工肛門が必要となることがあります。また、根治術がなされても再発率が高いという問題点もあります。この様な課題を克服するため、術前に化学療法や放射線治療を行い、手術では括約筋を可能な限り温存し、肛門や排便機能を残す努力をしています。現在は、腹腔鏡手術に加え、ロボット支援下手術(ダヴィンチ手術)を導入し、低侵襲の手術を積極的に行っています。
大腸癌に対するロボット支援下手術は直腸癌のみが現在(令和3年時点)保険適応となっています。ダヴィンチの手術器具の先端は指のように自由に曲げることができるため、術野での繊細な操作が可能となります。
繊細な手術を行うことにより根治性、肛門・排尿・性機能などの機能温存の向上が期待できます。特に直腸に密接する骨盤神経叢(排尿や性機能を担っている神経)を繊細な操作で丁寧に温存することにより、術後の排尿・性機能の保持や早期の回復が期待されます。後遺症の少ない、体に優しい手術が可能となります。
また、大腸癌を制するには転移・再発の治療と予防が必要です。私たちは遠隔(肺、肝臓などへ)転移を来たした根治切除が難しいと考えられる進行再発癌に対しても、がん集学治療センターや放射線治療グループと連携し、化学療法や 放射線療法と外科手術を組み合わせた集学的治療法を行っています。
潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患は、基本的には薬物療法などの内科的治療を行います。しかし外科的治療が必要となることがあるため、内科の専門グループとの連携の下、先進的治療と手術治療を組み合わせてQOL向上に取り組んでいます。大腸全摘術や小腸部分切除にも傷の少ない腹腔鏡下手術を積極的に取り入れています。
臨床にfeed backする研究を念頭におき、特に個別化治療を目指した抗腫瘍剤の感受性試験、分子標的治療薬や抗癌剤を用いた動物実験を行っています。