各 科 の ご 案 内
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テクニカルスキルとノンテクニカルスキルを備えた心臓血管外科医の育成
心臓血管外科 教授
田山 栄基
当大の心臓血管外科は、1960年に九州初の人工心肺を使った開心術を始めた伝統ある教室です。脈々と受け継がれてきた知見の上に、現在は弁膜症、冠動脈疾患、大血管疾患、先天性心疾患と幅広い治療を行っています。最近は大動脈に対するステントグラフト、カテーテルによる人工弁植え込み(TAVI)といった低侵襲治療により、高齢者や合併症を多く抱えた患者さんにおいても、早期に回復していただいています。肋間小開胸での弁膜症手術(MICS)といった低侵襲手術も、手術ダメージが少ないため早期社会復帰に有用です。
また、植え込み型人工心臓(VAD)を使った心不全治療など、既存の治療では対応困難だった難病に対する先駆的治療にも力を入れています。もちろん急性大動脈解離や急性心筋梗塞を始めとする緊急症例にも多数対応し、循環器内科と共に地域循環器医療の主軸を担っていると自負しています。
さて我々の仕事において良い結果を出すためには、三つの力が必要です。一に“正確な診断力”、二に“適切なプラニング(戦略力)”、三に“高い技術力”。何よりもまず正確に診断し、その上で治療のベストプランを立てねばなりません。ただし、病気が相手ではなく、患者という一個人を相手にしていることを忘れてはなりません。さらに、豊富な知識の上で鍛錬を重ね、優れた手術を実践する技術力は外科医として最も期待されている力でしょう。診断力、戦略力、技術力、何れが欠けても良い結果には繋がりません。
また専門的な知識と経験(テクニカルスキル)に加え、「ノンテクニカルスキル」も重要です。ノンテクニカルスキルとは、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、状況認識、意思決定などを包含する総称です。テクニカルスキルを最大限発揮するためには、ノンテクニカルスキルの充溢が必須です。私は学生時代にラグビーをしていましたが、ラグビー憲章では品位、情熱、結束、規律、尊重の重要性を謳っています。これは “外科医のリーダーシップ”にも相通ずるものと思います。「品位」医師として高い見識を持ち、礼節を持って振る舞うこと。「情熱」常に熱い心をもって、真摯にことに当たること。「結束」ともに働く医療スタッフを大切にし、利他の精神を大切にすること。「規律」人が見ていないところでも模範的に振る舞い、狡猾を嫌い、愚痴をこぼさず物事に取り組むこと。「尊重」異なる価値観を持った人に対してそれを理解しようと努力し、その価値を認めること。
上記のような教室風土の中で、ローテーションによるバリエーションに富む経験、手術経験症例数の確保、指導医による手術手技勉強会の充実、他科との共同研究など、外科医育成システムは充実していると思います。テクニカル、ノンテクニカルともに優れた心臓血管外科医を多数育成し、地域医療の中核を担うとともに世界にその知見を発信できるよう邁進する所存です。
当科では、弁膜症、冠動脈疾患、大血管疾患、先天性心疾患、末梢血管疾患と、心臓血管疾患全般の診療を行っています。近年では大動脈疾患に対するステントグラフト手術、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI)、小切開低侵襲心臓手術(MICS)、血管内治療と外科的手術を組み合わせたハイブリッド手術などの低侵襲治療を積極的に行い、患者の皆様の早期社会復帰を実現すべく取り組んでいます。
また、当院は植込み型補助人工心臓(VAD)実施施設として、九州地区の重症心疾患治療における重要な役割を担っています。
急性大動脈解離や急性心筋梗塞などに対する緊急手術は24時間365日体制で対応し、地域の心臓血管病の救急医療に貢献しています。
開心術時に摘出した心臓弁組織や心臓脂肪組織、開胸手術・開腹手術時に摘出した大動脈組織などを用いた組織学的研究や分子生物学的研究を行っています。これらの基礎的研究は久留米大学循環器病研究所と連携して実施しており、その実験結果は臨床の現場でも応用され、国内外で高い評価を受けています。
臨床研究に関しては、心臓血管外科領域は様々な先端医療や新たな治療デバイスが日進月歩で発展している領域であり、それらの最新治療を積極的に取り入れ、その治療成績を報告しています。
また、様々な低侵襲治療の導入により手術対象となる患者さん方はますます高齢化しており、加齢による筋力低下(サルコペニア)や栄養状態、大動脈の老化などに着目し、それらが治療成績や生命予後に及ぼす影響などを研究しています。
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